発情期の季節になるとおうちの外から「ンニャオ~…」という、人間の赤ちゃんがぐずって泣く声に似たような猫の唸り声をよく耳にするのではないでしょうか。
猫を多頭飼いされている方であれば、おうちの中でも聞くことがあるかもしれません。
うちの猫、特に若いオスの猫同士がよくこんな声を発して相対しています。出会い頭に毛を逆立てて「ヴゥ〜…」とお互いに唸っています。
その様子はまさに一触即発。そう、この声は猫同士の喧嘩の真っ最中の声なのです。
その鳴き声が猫の喧嘩の時のものというのは皆さんご存知だと思います。
むやみやたらに喧嘩しているように見えなくもない猫同士の喧嘩ですが、そこにはきちんとルールがあって、勝ち負けもそのルールに則って決まることは実はあまりよく知られていません。
私達人間が喧嘩をするのに理由があるように、猫にも喧嘩をする理由があるのです。
ここでは猫が喧嘩をする理由やルール、どうやって勝ち負けが決まるのかを徹底解説!
あなたの猫ちゃんは喧嘩に強い?それとも弱い?そもそも喧嘩しなければケガもしないのになぜ喧嘩するの?そんな飼い主さんの疑問も、これを見ればきっと解決しますよ♪
猫が喧嘩をする意外すぎる理由とは?
理由その①:縄張り争い
動物が喧嘩をする理由としてまず考えられるのは『縄張り争い』ですよね。猫にも例に漏れず縄張りはありますが、猫の縄張りは決して広くはなく、自分の住処を中心に半径100メートル前後です。
ですが、その縄張りを守るために猫は喧嘩をします。ごはんや水、寝床の『ホームテリトリー』の確保、狩猟本能を満たすための『ハンティングテリトリー』の確保、どちらも猫にとっては生きていく上で欠かせないものです。
毎日ごはんをもらえるわけでも、温かい寝床を与えられているわけでもない野良猫には特に死活問題です。
我が家の猫の喧嘩でいちばん多いのがこのパターンのものです。時折「このごはんは私の!」とか「ここは私の寝床!」と喧嘩することがあります。
理由その②:発情期
様々な動物にも見受けられるように、発情期のメス猫を巡ってオス猫同士が喧嘩をすることもあります。
発情期のメス猫はオス猫を誘うフェロモンを出して、オス猫を引き合わせて喧嘩をさせます。フェロモンも喧嘩も、強い遺伝子を未来に繋げるための生殖本能からくるものなのです。
それでもメス猫に相手をされなければ自分の遺伝子は残せませんので、メス猫に「俺は強いんだぞ!」というアピールも兼ねての喧嘩ですね。
そうして喧嘩に勝った強いオス猫が、自分の遺伝子を未来に繋げていけるのです。
理由その③:単なる相性の不一致
「ただ単に気に食わないだけ」、それが喧嘩の理由になることもあります。これは野良猫ではなく室内でのみ飼われている猫に多い傾向にあるとされています。
猫は本来単独行動を好む動物で、住んでいる家自体が自分の縄張りになります。そこに別の猫が外から入ってきたらもちろん喧嘩になるでしょう。
ですが、その家で生まれた子猫が大きくなる等ずっと一緒に暮らしてきた猫同士であればどうでしょう。縄張りも共有されるのでは?と思うと思います。
しかし実際は共有できる相手とできない相手というのがいるようで、共有できない相手とは喧嘩になることもあります。
それはただ単に相性が合わないとしかいいようがないのです。また今まで強かった猫が弱くなった時等、猫同士の力関係が不安定な場合も喧嘩になりやすいようです。
猫の喧嘩のルール!勝ち負けはどうやって決まるの?
それでは、そんな理由のもとに猫が喧嘩をする時の勝ち負けはどうやって決まるのでしょうか?
何かと不思議の多い猫同士の喧嘩のルールを、喧嘩の始まりからご説明いたします。
その① 相手を見極める
喧嘩が始まりそうな時の猫は意外と状況をよく見ています。
一般的に猫は自分より体格のいい相手には喧嘩を仕掛けません。相手の体格や雰囲気で自分に勝ち目がないとわかると即撤収!なことも珍しくはないのです。
その② 睨み合いからの威嚇の応酬
喧嘩の相手だと決めると、そこから猫はお互いから目を逸らしません。一瞬の隙が命取り、とまではいかないかもしれませんが、大きなケガを負ってしまう可能性が高くなるからです。
そして「ヴゥ〜…」や「フシャー!」といった唸り声や威嚇の応酬が始まります。もちろんここで気圧された猫とは喧嘩には発展しません。
その③ 取っ組み合いの喧嘩スタート
それでも相手が退かない場合は本格的な取っ組み合いの喧嘩が始まります。
先制攻撃のタイミングをうかがって猫パンチを繰り出し、相手は負けじとより強いパンチをお見舞いし、しまいには取っ組み合いになって首に噛みついたりキックで弱点の腹部を狙ったり。
あまりに激しい喧嘩になると、時にケガを負うこともあります。
その④ 抵抗や反撃がなくなると喧嘩終了
どちらかの反撃がなくなった段階で喧嘩は終了です。
最後まで攻撃を繰り出していた方が『勝ち』、反撃をやめた方が『負け』になります。
反撃をやめた猫がその場でうずくまる等の防御姿勢に入ったり、逃げ出したりすると「参りました!」「負けました!」という降参のサイン。
勝った猫は負けた猫にさらに追い討ちをかけることはなく、その場を後にするという暗黙のルールもあります。
その⑤ 喧嘩をした猫同士は基本的に二度と喧嘩しない
負けた猫は勝った猫に対して逆らうことは許されません。もし逆らったら再び喧嘩になり、自分が負けることがわかっているからです。
それは勝った猫も同じで、同じ結果なら無用な争いはしないようにしています。
☆番外:喧嘩中に突然のグルーミング
喧嘩をしている時に片方の猫が突然グルーミングを始める時があります。これを猫の『転移行動』といいます。
グルーミングをするのはだいたい劣勢の猫で、「負けそうだなあ…どうしよう…」という気持ちをグルーミングによって落ち着けているのです。
転移行動によって喧嘩をやめる時もありますが、勝っている猫が興奮状態だと喧嘩続行する場合もあります。
次の動画は猫同士の喧嘩の一部始終を撮ったものです。喧嘩をすると流血沙汰になりかねない、というのがわかるほどの取っ組み合いですね。
そして、次の動画は喧嘩までに発展せずに唸り声のみで終わるパターンのものです。唸り声の応酬がまるで口喧嘩のようで、ハラハラもしつつ思わずクスッと笑ってしまう微笑ましさもありますよ!
まとめ:猫の喧嘩は必要?人間社会にも通じる意思のぶつかり合い
個体差はありますが、猫は本来争いを好まない生き物とされています。
そのために縄張りをきちんと分けて自分以外の縄張りには近寄らないようにしたり、喧嘩が始まりそうな時は先に相手を見極めたりと、なんとか回避しようとしているのです。
ですが、それだけでは済まないもの、生きていく上で不可欠な食べ物や寝床の確保、生殖に関することは別問題。
私達人間であれば言葉で意思を伝えることができますが、猫は言葉を喋れません。自分の意思を伝えるため、ひいては猫自身の社会性のために喧嘩をすることは必要なのだと思います。
私達は喧嘩になるからと心に溜まったものを言葉にすることを躊躇いますが、猫はあえて喧嘩に挑み勝ち負けを決めることで、自分の猫社会での立ち位置を明らかにしていくのです。
それは私達人間が猫から学ぶべき社会性でもあるのかもしれません。
ですがそれはそれとして、飼い猫がケガをしてしまうことは飼い主さんにとってつらいことには変わりありませんので、あまり過度な喧嘩に発展しそうな時は注意して見守りをすることをオススメします。
あまりに喧嘩が大好きな猫ちゃんが心配な方は去勢手術をすることをオススメします。生殖機能がなくなることで喧嘩の要因をひとつ減らすことができますよ。
もしケガをしてしまった時は病院にすぐ連れていったりとアフターケアを欠かさないようにしましょう。
飼い猫が猫社会において強くても弱くても、飼い主さんにとって大事な家族に変わりないですからね♪
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